板谷国際特許事務所- Itaya & Associates

裁判事例


職務発明についての係争事例


(1)ピックアップ装置発明補償金請求事件(オリンパス工業)
H11.4.16東京地裁、H13.5.22東京高裁 請求訴額約10億円 判決:発明者の貢献度5%として250万円認定


(2)青色発光ダイオード特許発明についての対価請求事件 平成13(ワ)17772(中村修二氏vs日亜化学工業) 争点:相当対価、請求訴額約20億円、権利の帰属

 H14.9.19東京地裁 中間判決:GaN系発光素子に関する特許第2628404号の権利は会社に帰属(黙示の合意により)すると判断
 H16.1.30東京地裁

 原告主張の相当対価=上記多数の特許に係る独占の利益×本件特許権の貢献度×原告(発明者)の貢献度 として、3357億5300万円×1(100%)×1(100%)=3357億5300万円

 被告主張の相当対価=被告の売上高×競業他社に発明の実施を禁止できたことに起因する割合×実施料率×発明者の貢献度 として、限りなくゼロ

 地裁判決要旨

 相当対価の算定方法について:

 使用者が当該発明に関する権利を承継することによって受けるべき利益(同法35条4項)とは,当該発明を実施して得られる利益ではなく,特許権の取得により当該発明を実施する権利を独占することによって得られる利益(独占の利益)と解するのが相当である。ここでいう独占の利益とは,① 使用者が当該特許発明の実施を他社に許諾している場合には,それによって得られる実施料収入がこれに該当するが,② 他社に実施許諾していない場合には,特許権の効力として他社に当該特許発明の実施を禁止したことに基づいて使用者があげた利益がこれに該当するというべきである。上記②においては,例えば,使用者が当該発明を実施した製品を製造販売している場合には,他社に対する禁止の効果として,他社に実施許諾していた場合に予想される売上高と比較して,これを上回る売上高(以下「超過売上高」という。)を得ているとすれば,超過売上高に基づく収益がこれに当たるものというべきである。また,使用者が当該発明自体を実施していないとしても,他社に対して当該発明の実施を禁止した効果として,当該発明の代替技術を実施した製品の販売について使用者が市場において優位な立場を獲得しているなら,それによる超過売上高に基づく利益は,上記独占の利益に該当するものということができる。③ 他社に実施許諾していない場合については,このほか,仮に他社に実施許諾した場合を想定して,その場合に得られる実施料収入として,独占の利益を算定することも考えられる。

 このようにして,使用者が特許権の取得により当該発明を実施する権利を独占することによって得られる利益(独占の利益)を認定した場合,次に,当該発明がされる経緯において発明者が果たした役割を,使用者との関係での貢献度として数値化して認定し,これを独占の利益に乗じて,職務発明の相当対価の額を算定することとなる。

 独占の利益は、1兆2086億0127万(円)×1/2×0.2= 1208億6012万(円)、相当対価は、独占の利益に発明者の貢献度50%を乗じた604億3006万(円)

 (教訓)相当の対価は、独占の利益を考慮して決定される。適正な報酬、適当な時期での和解、妥当な貢献度評価が必要。


(3)再生用光ヘッド発明・ウオブルディスク発明補償金請求事件 (日立製作所)
H14.11.29東京地裁 請求訴額は9億7千万円
 判決:「相当の対価」として3,494万円認定、会社にもたらした利益約2億5千万円、発明者の貢献度は20%とした。ライセンス収入も加味、外国権利に基づく請求はできないとした(これは問題?)。本発明は、ディスク上に記録されたドット情報を再生するビデオディスク再生装置に適した光学系に関する基本的なもの。外国5カ国でも特許成立。
 (参考)本件特許第1547005号の請求項1
「光源と,該光源からのビームを媒体上に収束する光学系とからなる光学的情報処理装置において,上記光源は,縦方向と横方向で発散角の異なる楕円形状のビームを放出する半導体レーザであり,上記光学系は,該楕円形状ビームの横方向分布の半値幅以内になる円形開口を有し,上記ビームが上記媒体上にほぼ円形状のスポットとして収束されることを特徴とする光学的情報処理装置。」