板谷国際特許事務所- Itaya & Associates

裁判事例


キルビー特許裁判事件(サブマリン特許の代表例)

テキサス・インスツルメント(TI社)対 富士通 「集積回路」特許事件
 平成6年(1994年)東京地裁判決(平成3年(ワ)第9782号債務不存在確認請求)請求容認(原告:富士通)
 TI社のキルビー特許第320,275号(特公昭61-55256)「半導体装置」
 本特許は、1959年(昭和34年)2月6日に米国出願されたものを、優先権主張して昭和35年2月6日に日本出願。10件の分割出願、2件の孫出願のうちの一つ。審判、13社の異議申立を経て成立。
 従前の特許法適用のため、特許権の存続期間が出願日より20年に制限されることなく、公告日1986年11月27日から15年間(2001年11月27日まで)が権利有効期間。
 ※昭和35年4月1日特許法改正により特許権の存続期間は出願より20年に制限
 キルビー特許第320,275号のクレーム
①複数の回路素子を含み、主要な表面及び裏面を有する単一の半導体薄板と、
②上記回路素子のうち、上記薄板の外部に接続が必要とされる回路素子に対し電気的に接続される複数の引出線とを有する電子回路用の半導体装置において、
③上記複数の回路素子は、薄板の種々の区域に互いに距離的に離間して形成されており、
④以下省略
 イ号物件
 1メガDRAMであり、多数のメモリセルを有し、各メモリセルは回路素子であるMOSFETとキャパシタから成る。
 判決争点1 :「電子回路用の半導体装置」の解釈・・・本件発明の対象は一個の物としての装置であり、請求の範囲に記載された要件を全て充足するような電子回路のみを備えた装置を意味する。請求の範囲に記載された要件を充足していない電子回路があるといった装置を意味するものではない。イ号物件ではキャパシタなどがシリコン基板の外部に存在し、これらを含むイ号物件は本構成要件を充足しない。
 判決争点2 :「各素子間は互いに距離的に離間して形成され」の解釈・・・審査経過の中で、「距離的に離間」とは、バルク抵抗が介在することを挙げている点を捉えて、イ号では不純物を介在させて絶縁しているので、構成要件に該当しない。
 最高裁判決2000年4月11日 :原出願と同一であって分割要件を満たさないので特許無効であり、権利濫用にあたるとして、TI社の請求を棄却した。
 参考文献:「キルビー特許訴訟に富士通勝訴」特許と企業94年9月