板谷国際特許事務所- Itaya & Associates

ビジネスモデル発明の進歩性など

ビジネスモデル特許事例に学ぶ発明の進歩性判断基準

「振込処理システム」(特許第3029421号)株式会社住友銀行 入金照合サービス<パーフェクト>
 【経緯】出願 平成10年10月6日(国内優先10.2.13/10.6.29)
 拒絶理由通知 平成11年8月27日 引用文献(特表平9-504634)29条2
 意見書提出(振り込まれた複数の関連口座の資金を1つの特定口座に振り込むという着想は引用例に示唆されていないこと等を主張)により、特許査定 平成12年1月21日 特許異議申立 ①第一勧業銀行 ②あさひ銀行 ③富士銀行
 【本件特許発明の要旨】
 【請求項1】
(イ)支払人と関連づけられた複数の関連口座を用いて振込を行う振込システムであって、
(ロ)複数の関連口座に振り込まれた資金を、取りまとめるための特定口座に入金処理を行う手段と(図3 S308他)、
(ハ)関連口座への振込情報を、支払人と関連付けられた関連口座の口座関連情報を付加して、出力する出力手段と(図3 S304)、
(ニ)出力された振込情報を特定口座の振込情報として格納する手段と(図3 S306)、を備える。
 【請求項2】 請求項1において、(ロ)が、
(ホ)振り込まれた口座が支払人と関連づけられた関連口座であるかを検出する手段と(図3 S302)、
(ヘ)関連口座であるときは、特定口座との対応付けを行う手段と(図3 S304)、
(ト)特定口座に入金処理を行う手段と(図3 S308)、を備える。
 【特許異議】
 ①第一勧業銀行の異議申立
 甲第1号証 日経コミュニケーション出版物
 甲第2号証 新金融シリーズ出版物
 甲第3号証 エレクトロニックバンキング出版物
 甲第4号証 第一勧銀の残高管理サービス登録票(パンフレット)
 甲第5号証 特開平10-11633…金融機関の合併等による振込先の変更一覧ファイルと称するテーブルを使用
 請求項1:甲第1号証に(イ)(ロ)(ハ)(ニ)の構成相当が記載されている。或いは(ハ)(ニ)は単なる設計事項或いは周知事項(29条2項)。必要なら、(ハ)は甲第4号証、(ニ)は甲第1号証、甲第4号証に。または、主たる構成(ロ)が甲第2号証、第3号証に。
 請求項2:(ホ)(へ)は甲第5号証に。
 ②あさひ銀行の異議申立 省略
 ③富士銀行の異議申立 省略
 【進歩性に関する考察】(私論)
 請求項1の「支払人と関連づけられた複数の関連口座」がより具体的に特定されなければ、従来技術との差異が明確ではない。すなわち、本発明においては、銀行が、本システムサービスを受けたい企業(銀行に口座を有する)の振込専用口座(番号)を設定し、これを企業に通知し、通知を受けた企業は振込専用口座番号を振込予定者に割り当て、これを通知する、との(人為的な)取決めが前提となっている。従って、その前提が発明の構成要件として明確に規定される必要があるのでは。
 審査基準によれば、「当業者による通常の創作能力の発揮」の範囲内については、進歩性は否定される(例えば、人間が行っている業務のシステム化について、通常のシステム設計手法を用いた日常的作業で可能な程度のもの)。この観点から、本件を見ると、「銀行が顧客(企業)に対して複数の振込専用口座を設定する」ことが銀行業務において公知であったか否かがキーポイントになるのでは。あさひ銀行等による特許異議申立では、パンフレットやサービス利用申込書により銀行のコンピュータが発明を公然実施していたものと主張しているが、公然実施と言えるか。むしろ、これらパンフレット等で発明の一つの構成要件が公知であるとして、これとコンピュータ技術の公知文献との組み合わせで進歩性なしとの主張をしてみてもよかったのでは。
 【特許異議の決定】 異議理由なしとされ、特許維持
 特許維持の訂正請求項1(原請求項2の内容が入った)
(イ)選定された複数の関連口座を支払人ごとに関連付けることにより該支払人が前記複数の関連口座を用いて振込を行う振込処理システムであって、
(ロ)前記振込処理システムを介して前記複数の関連口座に振り込まれた資金を取りまとめるための特定口座に入金処理を行うために、支払人が資金を振り込んだ口座が前記関連口座であることを検出し、前記関連口座を前記特定口座に対応付けることにより、前記特定口座に入金処理を行う入金処理手段と、
(ハ)前記関連口座への振込情報に対して、前記関連口座の口座関連情報および/または前記関連口座を特定する番号を付加して、前記振込情報を出力する出力手段と、
(二)出力された前記振込情報を前記特定口座の振込情報として格納する格納手段とを備えることを特徴とする振込処理システム。


米国でのビジネスモデル特許事例と日本との比較

「音楽プロダクト試聴のためのネットワーク装置及び方法」(USP 5963916 1996年出願、1999年特許)
 権利者(原告):Intouch group(US)
 被告:Amazon.com(US)、他複数(ネット上で音楽の配信、CD-ROM販売)
 請求項
 1. コンピュータ、コンピュータのディスプレイ、および遠隔ユーザのコンピュータとネットワークウェブサイト間のテレコミュニケーションリンクを用いて、遠隔ユーザが異なる予め記録された音楽プロダクトの予め選択された一部を含むネットワークウェブサイトから予め記録された音楽プロダクトの一部を試聴することを可能にする方法であって、以下のステップを含む。
a)遠隔ユーザコンピュータを用いてネットワークウェブサイトとの通信リンクを確立し、そのネットワークウェブサイトは、(i)通信ネットワークに接続され、遠隔ユーザの要求を受けて予め記録された音楽プロダクトの予め選択された一部を復元して送信する中央ホストサーバと、(ii)複数の異なる予め記録された音楽プロダクトの予め選択された部分を格納する中央格納装置とを備え、
b) 遠隔ユーザのコンピュータから中央ホストサーバにユーザIDを送信し、中央ホストサーバがユーザの動きを特定し、追跡することができるようにし、
c) 中央ホストサーバから予め記録された音楽プロダクトの少なくとも一つの予め選択された一部を選択し、
d) 予め記録されたプロダクトの予め選択された一部を受信し、そして、
e)予め記録された音楽プロダクトの予め選択された部分をインタラクティブ(双方向)に試聴する。
 6. コンピュータ、コンピュータのディスプレイ、および遠隔ユーザのコンピュータとネットワークウェブサイト間のテレコミュニケーションリンクを用いて、予め記録された音楽プロダクトの予め選択された部分を遠隔ユーザに試聴可能とするネットワークウェブサイトであって、次のものを備える。
a)・・(略)・中央ホストサーバ
b)・・(略)・中央格納装置
c)・・(略)・ID手段
d)・・(略)・制御手段
 本発明は極めて基本的構成のみから成り、日本ではこのような広い概念の発明は進歩性なしとして拒絶される虞が高いと思われる。


ビジネスモデル特許の日本での訴訟事例

「インターネットの時限利用課金システム」事件・・・東京地裁平成12年(ヨ)22,138 民事仮処分(特許第2939723号) 申立却下
 争点となった本件特許の構成要件
 ①インターネットとの接続サービスを提供する
 ②インターネットとの接続の可否に係る認証を行う
 被告システムにおける対応する構成要件
 ①インターネットとの接続が確保されていることを前提に、インターネット上で購入したコンテンツの代金決済を行う
 ②利用者が入力したカード情報によってシステム利用に係る認証を行う